essay | Vol.5 | 2023.03 update

Text: Takahisa Suzuki(16 Design Institute)

 循環というテーマを視覚的に考えるのであれば、まずは正円の形を誰もが思い浮かべるのではないだろうか。エレン・マッカーサー財団が提唱するサーキュラーエコノミーのマークでも円形がいくつも重なったマークが示されている。だが、本当に円が一周繋がった形に私たちはできているのだろうか。例えば、水は循環できていると考えてもよいだろう。雨が降り、土に浸透し、やがて海まで辿り着く。そこで水蒸気となり、また雨として戻ってくる。確かにこの構造を人工的に結びつけて考えれば円を描くことができる。資本主義経済の中で資源を無駄なく消費し、できる限り持続可能な環境に配慮していくことは、今後の社会でとても大切だと思う。しかし、一度使ってしまった資源を再度同じ状態に戻すには多くの時間と経済的な問題があり全ては不可能である。そこで本プロジェクトは「重ならない円」をコンセプトの柱にすることを考えた。これは同じ場所には戻れないのだが、階層を一段上げた場所へ戻り 、再び上昇していくことをメッセージとしている。横から見た時に螺旋階段のような形状をイメージしてもらえると分かりやすい。この形は時には掘り下げることも示すことができ、過去の積層された時間からアイデアを紡ぐこともできる。 また、他との関係を繋ぐ事で別の円形を形成できることもここでは、付け加えておきたい。
 資源はなにもしなければ、そのまま枯渇していくと思う。しかし、人類はどの時代でも知恵を働かせ、その資源を補えるように努力し続けている。そこに時間が積層されて、積み重なっていく。何十年、何百年と続いている人の営みを支えてきた知恵の循環は、同じ場所に戻っているのではなく、何度も何度も同じような失敗の先に出来たかけがえのない歴史だと考え、このグラフィックのアイデアに行き着いた。

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credit
Design & Photograph: Takahisa Suzuki(16 Design Institute)
Copywrite & Text: Atsuko Ogawa(Loftwork Inc.)
Text: Madoka Nomoto(518Lab)
Photograph: Yoshiyuki Mori(Nanakumo Inc.)

Director: Makoto Ishii(Loftwork Inc.)
Director: Wataru Murakami(Loftwork Inc.)

Producer: Yumi Sueishi(FabCafe Nagoya Inc.)
Producer: Kazuto Kojima(Loftwork Inc.)
Producer: Tomohiro Yabashi(Loftwork Inc.)
Production: Loftwork Inc.
Agency: OKB Research Institute

 

本プロジェクトへのお問い合わせは

株式会社FabCafe Nagoya CE事務局 
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3丁目6-18 
Mail : info.nagoya@fabcafe.com


© Loftwork Inc.  / FabCafe Nagoya Inc. / OKB Research Institute


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