essay | Vol.2 | 2023.03 update

Text: Atsuko Ogawa(Loftwork Inc.)

 木曽三川の中流域のあたり、現在の尾州地区のあたりまで、今からおよそ二万年前までは海であったということ、さらに遡ると伊勢湾そのものが〝東海湖〟という湖だったという。海や湖だった頃の土地の記憶を表すかのように、今もその川幅は大変広いまま、水は土地の以前の姿をそのままに記憶したようにも見える。三本の川の上流から海に流れ込んだ土砂が積み上がって堆積し続け、濃尾平野という沖積平野が岐阜・愛知・三重三県にまたがるように出来上がった。森からの栄養分たっぷりの土壌が堆積した肥沃な大地は、まさに水によって構築された。木曽三川の上流・中流・下流域とそれぞれの土壌の特性に合わせた農業が営まれている。上流域では水捌けの良い大粒の砂に適した大根・葱・白菜など地中深くに伸びる作物、中流域では細かい砂地で肥えた土壌が特性でほうれん草・大根・人参などの作物に加え、植木や果樹などの苗木生産が行われている。河川と海に囲まれた下流域の三角州は、平坦で海抜が低く湿地帯であるため、蓮根や稲作に適している。このように濃尾平野全体では、風土に合わせた農が営まれ、多様な作物が育まれている。森の豊かな土壌は伊勢湾に流れ込み、淡水だった頃の記憶もしっかりと刻まれた海からは、海産物が豊富に育ち、旨味とコクたっぷりの穴子・鮑・牡蠣・海老がとれる。海の土壌も森によって育くまれてきた証、とも言えるだろう。この多種多様な食に応えるかのように、この地で育まれる発酵文化もまた、旨味とコクたっぷりの深い味わいに満ちている。


参考文献「日本発酵紀行」小倉ヒラク著 D&DEPARTMENT PROJECT 2019年発行


SDIM6372
SDIM6395

株式会社アサヒ農園

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Design & Photograph: Takahisa Suzuki(16 Design Institute)
Copywrite & Text: Atsuko Ogawa(Loftwork Inc.)
Text: Madoka Nomoto(518Lab)
Photograph: Yoshiyuki Mori(Nanakumo Inc.)

Director: Makoto Ishii(Loftwork Inc.)
Director: Wataru Murakami(Loftwork Inc.)

Producer: Yumi Sueishi(FabCafe Nagoya Inc.)
Producer: Kazuto Kojima(Loftwork Inc.)
Producer: Tomohiro Yabashi(Loftwork Inc.)
Production: Loftwork Inc.
Agency: OKB Research Institute

 

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