essay | Vol.1 | 2023.03 update
Text: Atsuko Ogawa(Loftwork Inc.)
木曽川を源流の方向に辿る途中に、「尾州」と呼ばれる、糸と毛織物の街がある。岐阜県西濃地域と愛知県尾張西部地域。大きな川幅のこちら側とあちら側で、紡績から一枚の布になるまで、分業と協業が行われている。肥沃な大地、平野に降り注ぐ明るい日差し、山からの緩やかな風が蚕用の桑や綿花の栽培に適していたこと、糸〜織り上げて布になるまでの工程には、整列した美しい水が必要とされるが、約二百三十キロメートルの長さのある木曽川の豊かな水があったことが、糸にとって必要なすべての条件を満たしていたとも言える。絹糸、綿糸、麻糸で培った、その類稀なる糸の技術。明治期の濃尾大地震を機に、生き残りをかけて、大きな事業構造の転換を求められ、尾州産地は、独自の路線を追求する道を選び、毛織物の集合産地へとその姿を巧みに変えていく。スーツの顔とも言える「最高級のウール地」が、本場イギリスやイタリアでは生地を織り上げる職人が少なくなっている一方で、この尾州には古くからのションヘル織機による織技術が継承されており、今もゆっくりと時間を刻みながら空気を共に織り上げるかのように織られ、世界各国からの注文が絶えることはない。同時に、これらの技術を集約し、現在の生産システムに対応する最先端技術やIT技術に特化した織工場も同エリアには存在する。一つのエリアでこれだけ多様に国内外からのニーズに応えられる尾州は、まさに、糸産業の技術と知恵の集積地といっても過言ではない。
長谷虎紡績株式会社
中伝毛織株式会社
葛利毛織工業株式会社
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credit
Design & Photograph: Takahisa Suzuki(16 Design Institute)
Copywrite & Text: Atsuko Ogawa(Loftwork Inc.)
Text: Madoka Nomoto(518Lab)
Photograph: Yoshiyuki Mori(Nanakumo Inc.)
Director: Makoto Ishii(Loftwork Inc.)
Director: Wataru Murakami(Loftwork Inc.)
Producer: Yumi Sueishi(FabCafe Nagoya Inc.)
Producer: Kazuto Kojima(Loftwork Inc.)
Producer: Tomohiro Yabashi(Loftwork Inc.)
Production: Loftwork Inc.
Agency: OKB Research Institute
本プロジェクトへのお問い合わせは
株式会社FabCafe Nagoya CE事務局
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3丁目6-18
Mail : info.nagoya@fabcafe.com
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